和歌山の文化や土地柄に根ざしたお酒をこの蔵から。
豊かな水に恵まれた関西屈指の酒どころ“伏見”や“灘”に比べると、和歌山の溝ノ口というロケーションは酒造りの環境的にも知名度的にもやや劣勢にある。そんな土地で、より魅力のあるお酒を造り、酒蔵としての価値を高めるためには?
……4代目の山本典正さんが突き詰めて考え、行き着いた答えは“和歌山らしさを出すこと”。「僕が考えるに、酒造りっていうのは、梅 酒でも焼酎でも日本酒でもワインでも、全部一緒。大地からできるものだと思うんです。それなら、文化や土地柄に根ざしたお酒造りが必要なんじゃないかなって」。
農家でヒントを得て、商品開発にフィードバック。
そこで、まず取り組んだのは原料となる和歌山の産物を探し出すこと。日本酒の核となるお米や酵母はもちろん、リキュールのことを視野に入れ、梅やゆず、レモンといった果実まで。
自らの足で農 家を訪ね歩き、その数ざっと20軒!「果実と言っても、おいしいだけではダメなんです。味や香りを引き出すに は、皮ごとプレスしてリキュールにしないといけないので、できる 限り低農薬でないと…」。そんな意見に賛同を得て、安全で良質な素材を提供してくれる生 産者の方々と契約。今ではお互いに安全面への意識がさらに高まり、有機無農 薬栽培にチャレンジしてくれる農家も出始めている。
「実は農家さんには商品開発のヒントがいっぱい隠されていて、訪ねることでまた違った発見があったんです。そこでアイデアを拾っては、杜氏補佐の柴田と相談しながらカタチにしていきます」。例えば、こうだ。とあるゆず生産者のお宅で、何気なくもらったレモンの果汁を飲んでみると、抜群においしい! すぐに、コレと日本酒でリキュールができないかと、柴田さんに持ちかける。試作を繰り返すうち、ただ入れましたというだけでなく、産物が前面に出るような味と香りにしたいという意見が出る。そうやって完成した鶴梅シリーズの季節限定版〜れもん〜をはじめ、若い二人が切磋琢磨してヒット商品を生み出して いるのだ。
スモモのような香りに、紀州ブランドの心意気が。

ほかのリキュールに関しても、手間ヒマかけて育てられた素材を使うからこそ、大量生産とは無縁の工程。原酒のまま7年間貯蔵した梅酒、約3年間試行錯誤を繰り返して完成したすっぱい梅酒、2年間熟成させた日本酒を使ったゆず酒…etc.。「梅って和歌山が本場でしょ。だから、特に梅酒には時間をかけましたねぇ。中でも、完熟状態まで置いた南高梅の朝摘みのものだけを収穫して使うっていうのが僕らのこだわりで…」。通常、梅酒に漬けられるのは青梅で、独特の青臭さ、苦みが出てしまうのが特徴。これを完熟梅にすると、梅本来が持つスモモのような香りが引き出せるのだとか。実際に飲んでみると、体験したことのないようなフルーティな香りと味わいが口いっぱいに広がる。まさしく、紀州ブランドにかけた心意気が伝わってくるよう。
蔵人プロフィール
- 平和酒造4代目 山本典正さん
- 1978年和歌山市生まれ、28歳。
京都大学在学中より、総合人材アウトソージング企業で人事コンサルとして働く。卒業後正式に就職し、住み慣れた関西を離れ東京へ。2005年10月家業である酒蔵を継ぐ。東京で培った組織&人事運営のノウハウを駆使しながら、商品開発や契約農家の開拓にも携わる。
- 平和酒造杜氏補佐 柴田英道さん
- 1974年ブラジル生まれ、32歳。
ご両親の仕事の都合により、8歳までブラジルで過ごす。小学校3年のころに大阪に戻り、大学まで関西で暮らす。卒業してからゆっくり自分を見つめ直した後、モノ作りの職に就きたいと1998年平和酒造に入社。味の感性に優れ、利き酒大会で上位にランキングされるほど。
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