2021.2.3

ちいさな酒蔵の不思議な道具。

平安の昔より米どころとして知られ、酒造りの文化を発展させてきた伊勢の国、三重。
そんなこの地で、選び抜いた米と澄んだ水を用い、
人の手作業で清酒づくりを続ける寒紅梅酒造さんにお邪魔しました。

さて酒蔵に着くと、金色に輝く大きな看板が出迎えてくれました。
伸びかけた私の髪も、負けじと輝いています。

大きな規模の酒蔵では機械化が進み
人の手が入ることが少なくなっている中、
寒紅梅さんは殆どの工程を変わらぬ手仕事で行いながらも日々工夫を重ね
新しいやり方を研究、開発していました。

「もう誰でもできるようにね、蒸しまでで80点出せるようにしたんだ。」
と赤裸々に語るのは、増田さん。
最近新しく蒸し器を新調し、よりよい均一な蒸しが行えるようになったそう。

そんなお話の合間にも時計を離さず
秒単位で米の水切りを続ける増田さんに、プロの心意気を感じる一行。

そしてお米の吸水タイムが終わると、お待ちかねの寒紅梅特製、おニューの蒸し器の登場です。

んん!?で、でかいぞ…!まるで自分が小さく縮んでしまったのではと錯覚するほどの、
せいろをそのまんま巨大化したような見た目に興奮を隠しきれない私。

ちなみにせいろなのに丸くないのは、
四角にすることで無駄なスペースを無くしより効率的に使う為とのこと。
ここにも増田さんの合理的な考え方が伺えます。

下のチューブがボイラーに繋がっていて、大量の熱い蒸気を一気に送り込むことで綺麗に蒸しあがる。
蒸しにはぬるい蒸気が大敵な為、この方法にしているのだそう。

そしてボイラーに火をつけると、
一瞬、全てがぶわっと蒸気に包まれた後、徐々に蒸し器からの蒸気に変わる。

蒸し器を覆った布から湯気が立ちのぼり、高い青空に消えていく様はまさに
幻想的という言葉がぴったりで、あまりの美しさに言葉を失う一行。

この景色が、ただ酒を作る作業のためという事実が胸を打ちます。

今年はコロナもあり、様々なところが普段通りにいかない日常を送ることになりました。
酒蔵も間違いなくその一つでしょう。

その中で、お酒をこれからもつくっていくために奮闘する寒紅梅さんには、
なんだか日本人の意地を見せられたように感じる、そんな旅なのでした。