2021.11.19

漫画、「夏子の酒」を読んで。

後輩に薦められて、夏子の酒を読んだ。

主人公、夏子の恋愛もさることながら、
本当に美味しい日本酒を作るため、
一癖も二癖もある周囲の人間を巻き込みつつ、
様々なことに挑戦し、
成長を見せる物語にガッツリ引き込まれた。

読み始めると、次の展開が気になるのなんの。
結局、全12巻を2日で読み切った。

そこで感じたことがある。

それは、夏子の酒の舞台である、
およそ30年前と現在を比べると、
日本酒を取り巻く環境は、
大きく変わったのだろうなということ。

その当時の日本酒の事情が、
丁寧に描かれているからよく分かるのだ。

例えば、物語の中では、大量の醸造アルコールや砂糖を添加した、
三倍増醸酒と呼ばれるお酒が、普通のお酒として売られている。

お酒というものは、日本酒というものはそういうもの。
それが30年前の大方をしめる空気感だったのだろう。

そんな空気感だから、志を持って米と麹だけで純米のお酒を作る、
夏子たちへの風当たりも強い。

取引先の酒屋さんですら、
安ければ安い方がいいとい考える方が多数。

夏子が信頼を置く蔵の杜氏さんですら、
美味しくないと分かっていても故郷に帰った時、
価格を気にせず飲めるのは三倍増醸酒だ、というようなシーンも出てくる。

実際、コストのかかる純米酒を作るということは、
ある意味異端だった時代なのかもしれない。

ただ、夏子はそんな時代の空気にも負けず、
純米のお酒こそ本物の日本酒というスタンスを貫く。

実際の酒蔵さんから伺った話だが、
昭和40年代に純米酒を作るとなった時、
かなり周囲から反対があったとのことだった。

その当時、純米酒を作るという事は、
本当に勇気のある挑戦だったのだと思う。

今、美味しい“日本酒”を普通に飲むことができているのは、
夏子の様に逆境に負けず、本物を追求する先人たちがいたから。

そんなことを教えてくれる漫画だったので、
結構、身に染みました。

それにしても、夏子は酒強すぎです。