2021.11.5

究極の“あーん”で、魔法にかける日本酒ペアリングコース。

今日、目が覚めると昨日の夜の出来事は嘘だったんじゃないかと感じるほどに
夢うつつな朝を迎えました。

なぜかって、とある“食堂”で魔法にかけられていたんです。

大阪の大人の街に、森に囲われた大きなビルが出現。
その中に、「食堂たのし」は確かに存在していました。

実際に体験していた先輩からの前情報は
「“あーん”、してもらいに行くんでしょ?」
「あれはたまらない」
など、なんだか不思議な反応…

そもそも“あーん”とはなんなのか。
百聞は一見にしかず。
母から授かった、曇りなきまなこで確かめるしかない。

そんなところへ店主の平田さんがご登場。
物腰がやわらかな、そしてなんだか“楽しそう”な平田さん。

流れるようにリズミカルな所作で、ペアリングコースが始まってしまいました。

ワイングラスにオンザロック。京都伏見の「蒼空 麹ましましまし」。
レモンの皮を縁に這わせ、そのまま絞りいれます。

すると、魔法にかかります。

ストレートで飲んでいたときはあんなにまろやかで丸かった彼も、
シュッと香りも味わいも白ワインのように喉を潤すように。
シルクのシャツをまとった美少年に、輝く変貌。

平田さんマジックに早くも目がまん丸。

「なんか急に静かになったな。こんな喋らない子やったっけ?」と
高田先輩から思わずツッコまれる。
言葉よりまず、この口内情報を処理しないと落ち着きません。

そして、運ばれて来たお料理にすっとスプーンを通し
真正面の日野先輩の口へ流れるように運ばれました。

で…出た…噂の“あーん”や。

「いちじくの甘みが1番出るまでよく噛んで、そのあとこちらで流して。」
とタイミングまで絆される。

すると、口の中の甘みに日本酒が集合しDNAの螺旋ばりに絡み合う味覚。
「喉も通り過ぎて、背中のあたりでふわっとするから。」と、
“胃袋を掴まれる”をまさに体現。

なるほど。
今日はもう全て平田さんに舞台は用意されている。
あとは、楽しんで踊るだけなんだ。と、勝手に「食堂 たのし」を解釈する。

一品目から、こんな調子であった。

その後も、心地よい人肌湯のようにコースは流れて行き
私の“あーん”の時間はすぐにやってきました。

「スズキの旨味を出す為しっかりよく噛んで、その後日本酒で流してください。」
舌に残る旨味とその上を行く日本酒のすっきりとした甘みが、
マリアージュして通り過ぎて行きました。

そんな体験に思わず黙食。言葉さえも失ったか…

お料理が変化して行くごとに変化して行く日本酒との相性。
時間までをも操る紳士、平田さん。
酒器ひとつをとっても、流れるスピード感までもコントロール。

こんな素敵な時間を提供する平田さんにとって、“あーん”とは愛の形なんだとか。
平田さんの話を聞きたくて、うずうず“あーん”を待ってしまっている自分は
がっつり心を掴まれていました。

さながらルパン三世である。

そんな心意気と人柄に、みんな「食堂 たのし」をまた訪れたくなってしまう。

「奴はとんでもないものを盗んでいきました。」