2020.11.24

走・攻・守のベストバランスな一本 -天明零号-

お久しぶりのコラムは、R2BYの新酒からスタート致しましょう。
今回のお酒はコチラ!

福島県の曙酒造が醸す【天明】中取り零号

でございます。

大好きな会津の酒蔵です。ワクワクします。

曙酒造の天明というブランドが出来上がったのは1999年のこと。徹底的な低温醸造でお酒を醸すのが特徴の天明。凄く丁寧で,難しい事なんですねぇ。
中取り零号は2011年から登場していますが、これは曙酒造も東日本大震災の被害を受け「零からのスタート」という気持ちをこめて作られました。

使っているお米は瑞穂黄金。
食米でも聞き慣れないお米だなーと思い、調べてみました。
どうやら「ひとめぼれ」というお米の突然変異だそうで、会津の中でも一番早く育つお米です。
5本のタンクからのブレンド、さらに酵母も協会9号+自社N+うつくしま夢酵母F701のブレンドという事です。

新酒ですが荒走りではなくいきなり中取り。いやぁ、贅沢だ。

さて、開栓。
一口飲んで出てきた言葉は
「これ飲み過ぎちゃうヤツ!!」
開栓したてから抜群のバランス感!本当に気をつけていないと、あっっっと言う間に無くなります。
甘すぎず、旨口すぎず、適度に酸で切ってくれる。
波の様に甘・旨・酸が押しては引く感動が味わえます。

このお酒は生酒ということで、自宅で瓶燗急冷して(60℃まで温度をあげて、冷凍庫で急冷)どのように味が変わるか試してみました。
結果は、細マッチョになった甘・旨・酸となりました。個人的には手を入れない方が好みでした。恐らく、私の技術の問題でしょう…今後の課題です。

このお酒に合わせたい曲は、フランスの作曲家ドビュッシーの【海〜三つの交響的素描〜】でしょうか。

日本に於いてドビュッシーは所謂「印象派」の作曲家として有名です。(余談ですが、本人は印象派と呼ばれるのは嫌だったそうですが…)

普段からよく耳にするベートーヴェンやバッハは「ドイツ音楽」なのですが、ドイツ音楽とフランス音楽の違いは何か。
簡単に言ってしまうと、ドイツ音楽は構成や重厚さ、和音の独立。
対してフランス音楽は和音の移ろいや煌びやかさ、透明感を重視しているように思います。
コレは明らかに言語に関係していますね。

海を聴いてみるとお分かり頂けると思うのですが、音楽の中に和音が溶け合っているんです。明るさも、眩しさも、暗さも、喜びも、哀しみも。

不安があっても前に進まなきゃいけない。そのために、ありのままを受け入れる。福島にある曙酒造がどれほどの想いで、これを作ったのか。それは私たちには計り知れません。

でもこのままではいけない、とその思いが伝わるのは、口の中で溶け合う酒と、和音が音楽の中で溶け合う音楽、そして天明の特徴である透明感とフランス音楽の透明感との相性をもって、伝わるような気がしました。

今回の演奏は、クラウディオ・アバド指揮のルツェルン音楽祭オーケストラ。世界中のスーパープレイヤーが集ったオーケストラです。

ちなみに私の一押しの聴きどころは、
4分30秒位からのチェロのパートソロと、19分40秒位からのテーマが各楽器に出てくる所、です!

【天明】中取り零号と共に是非。

(writer/ヴァイオリニスト 高橋宗久)

フランス作曲家ドビュッシー/【海〜三つの交響的素描〜】