2019.6.10

「あの声で」囁かれているような-大嶺 夏純 かすみ酒-

お酒を口に含みます。

「あッ………………」

としか出てこないんですね。

まるで、福山雅治の「あの声」で囁かれているような、そんなお酒です。

香りはそんなに強くなく、微かにピーチやレモンの香り。
口に含むと、とても丁寧に作ってあるお酒である事が一口でわかります。
夏酒ながら、14.5度とほぼ標準の度数で、原酒。
原酒らしいしっかりした輪郭の中に、米の旨味がギュッと詰まっているんですね。
そして余韻が長くて気持ちいいです。余韻も、上手にデクレッシェンド(減衰)していってくれる感覚。

かすみ酒という事で、濁りを混ぜずに澄んだ状態で頂くと、旨味の中にバランス良く酸が感じられます。この酸が良い仕事してるんですね。

濁りを混ぜると、米の旨味がさらにシルクで包まれた印象に変わります。

このお酒には、R.シュトラウス作曲の「メタモルフォーゼン」は如何でしょうか。
23の独奏楽器(ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバス)で演奏されるこの曲は、チェロの音色から始まり、伸びやかかつ響きの余韻が長いという点で、非常に相性が良いと思います。

チェロの柔らかでふくよかな音色と、山田錦のふっくらとした旨味は、どこか似ているような、そんな気がします。

(writer/高橋宗久)